音楽理論実践ノート

響きがグッと豊かに!テンションコードのやさしい使い方

Tags: テンションコード, コード理論, 作曲, 実践, 初心者

はじめに:いつものコードに「彩り」を加えてみませんか?

コード進行を作ったり、既存の楽曲を演奏したりする中で、「もっとおしゃれな響きにしたい」「いつものコードに変化をつけたい」と感じたことはありませんか?そんな時に役立つのが「テンションコード」です。

テンションコードと聞くと、少し難しそうに感じるかもしれません。確かに奥深い世界ですが、基本的な考え方といくつかのパターンを知るだけで、いつものコードが驚くほど豊かな響きに変わります。この記事では、音楽理論初心者の方でもすぐに実践できるよう、テンションコードの基本的な考え方と、いくつかの使いやすい例をご紹介します。

テンションコードとは何ですか?

テンションコードは、基本的な三和音や七の和音(セブンスコード)に、さらに特定の音を付け加えたコードのことです。付け加えられる音は、コードのルート音(根音)から見て長9度、長11度、長13度などの音程に当たる音です。これらは、元のコードの構成音から「緊張(テンション)」を生み出し、その緊張が解決したがる、あるいは独特な響きを作り出します。

例えば、Cメジャーセブンスコード(Cmaj7)は「ド・ミ・ソ・シ」の4つの音でできていますが、これにルートであるドから見て長9度上の音(つまり、レの音)を加えたものをCメジャーセブンス・ナインス(Cmaj9)と呼び、「ド・ミ・ソ・シ・レ」の音で構成されます。

| コード | 基本的な構成音 (Cをルートとした場合) | | :--------- | :------------------------------- | | Cメジャー | ド, ミ, ソ | | Cmaj7 | ド, ミ, ソ, シ | | Cmaj9 | ド, ミ, ソ, シ, レ (長9度) |

付け加えられる「特定の音」は、元のコードが属するキー(調)のスケール(音階)から選ばれることが一般的です。そうすることで、コード進行全体の響きと自然になじみやすくなります。

なぜテンションを加えると響きが変わるの?

テンションノートは、元のコードの構成音とは少し違う「不安定さ」や「浮遊感」をもたらします。この不安定さが、次に続くコードへの期待感や、豊かな色彩感を生み出すのです。シンプルな響きだったコードが、テンションを加えることで洗練されたり、ジャジーになったり、切ない響きになったりと、様々な表情を持つようになります。

初心者におすすめ!使いやすいテンションコードの種類

まずは、基本的なセブンスコードによく使われる、比較的取り入れやすいテンションをご紹介します。

  1. 9th(ナインス)

    • ルートから長9度上の音です。多くの場合、ルート音から見て長2度上の音と同じになります(例えばCの9thはD)。
    • 特に、メジャーセブンス(maj7)やドミナントセブンス(7)、マイナーセブンス(m7)によく追加されます。
    • Cmaj9 (ド・ミ・ソ・シ・レ) は、Cmaj7より明るく、少し浮遊感のある響きになります。
    • Cm9 (ド・ミ♭・ソ・シ♭・レ) は、Cm7よりも柔らかく、洗練された響きになります。
    • C7(9) または C9 (ド・ミ・ソ・シ♭・レ) は、ドミナントセブンスの持つ緊張感を和らげ、よりスムーズな響きやジャジーな響きになります。
  2. 11th(イレブンス)

    • ルートから完全11度上の音です。多くの場合、ルート音から見て完全4度上の音と同じになります(例えばCの11thはF)。
    • 主にマイナーセブンス(m7)やドミナントセブンス(7)に追加されます。(メジャー系のコードでは、11thは多くの場合「アボイドノート」となり、響きが悪くなることがあります。詳しい説明はここでは割愛します。)
    • Cm7(11) (ド・ミ♭・ソ・シ♭・ファ) は、Cm7に深みと広がりを加えたような響きになります。特に、ベース音とテンションの音が離れていると、響きがクリアになります。
  3. 13th(サーティーンス)

    • ルートから長13度上の音です。多くの場合、ルート音から見て長6度上の音と同じになります(例えばCの13thはA)。
    • 主にドミナントセブンス(7)に追加されます。
    • C7(13) (ド・ミ・ソ・シ♭・ラ) は、C7に明るさや開放感を加えたような、おしゃれでジャジーな響きになります。

これらのテンションは、コード名の後ろに数字(9, 11, 13)を付けて表記されることが多いです。(例: Cmaj9, Cm7(11), G7(13)など)

実践!コード進行にテンションを加えてみましょう

簡単なコード進行を使って、テンションコードがどのように響きを変えるか見てみましょう。

元のコード進行例 (Cメジャースケール内)

Cmaj7 - G7 - Am7 - Fmaj7
(ドミソシ) (ソシレファ) (ラドミソ) (ファラドミ)

この進行に、先ほど紹介したテンションを加えてみます。

テンションを加えた例

Cmaj9   - G7(13)  - Am7(11) - Fmaj9
(ドミソシレ) (ソシレファラ) (ラドミソファ) (ファラドミソ)

※Fmaj9の13thはCメジャースケールではソの音になります。

元のコード進行も自然で美しい響きですが、テンションを加えた方は、より豊かで洗練された響きになったと感じるのではないでしょうか。特にG7(13)やAm7(11)は、元のコードに独特の浮遊感や深みを加えています。

このように、既存のコード進行の特定のコードにテンションを「試してみる」ことから始めるのがおすすめです。

楽器やDAWで試すには?

重要なのは、理屈だけでなく実際に音を聴いてみることです。「この響き、いいな」と感じたら、それが発見です。

テンションコード活用のヒント

まとめ:テンションコードで音楽表現を広げよう

テンションコードは、基本的なコードに少し音を付け加えるだけで、あなたの音楽の響きをグッと豊かにしてくれる強力なツールです。最初は難しく考えず、今日ご紹介した9th、11th、13thあたりから、お気に入りのコード進行に試してみることから始めてみてください。

DAWや楽器を使って実際に音を出しながら、「この音を加えると、こんな響きになるのか!」という発見を楽しんでいただけたら嬉しいです。テンションコードを使いこなすことで、きっとあなたの作曲や演奏の表現力がさらに広がることでしょう。

これからも様々な音楽理論を学び、実践に活かして、音楽をもっと楽しんでいきましょう。