スケールを知ればコードがわかる!実践的なコード作りのやさしい理論
音楽理論を学ぶ上で、スケールとコードは欠かせない要素です。それぞれ単独で学ぶことも大切ですが、「スケールからコードが生まれる」という関係性を理解すると、コードの仕組みがより深く分かり、作曲や演奏のアイデアが格段に広がります。
この記事では、なぜスケールが分かるとコードが理解できるのか、そして、最も基本的なダイアトニックコードがどのようにスケールから生まれるのかを、やさしく解説します。さらに、この知識をどのように音楽の実践に活かせるのか、具体的な方法をご紹介します。
スケールとコードの基本的な関係
まず、スケールとコードの定義を改めて確認しましょう。
- スケール(音階): ある基準の音から始まり、特定の音程(音と音の距離)の並びで順番に音が配置されたものです。例えば、ドレミファソラシドは「ハ長調のスケール(Cメジャースケール)」です。これは音が横に並んだものとイメージすると分かりやすいでしょう。
- コード(和音): 複数の音が同時に響いたものです。特に音楽理論でコードと言う場合、特定の音程で重ねられた3つ以上の音の組み合わせを指すことが多いです。例えば、ド・ミ・ソを同時に鳴らすと「Cメジャーコード」になります。これは音が縦に重なったものとイメージすると良いでしょう。
スケールは、楽曲で使うことのできる「音の材料リスト」のようなものです。そして、コードは、その「音の材料リスト」の中からいくつかの音を選んで重ね合わせたものなのです。
したがって、あるスケールを知っていれば、「そのスケールの中でどんなコードが使えるのか」「なぜそのコードがそのスケールに合うのか」が分かります。これが、「スケールを知ればコードがわかる」という理由です。
スケールからダイアトニックコードを作ってみよう
最も基本的でよく使われるコードは、「ダイアトニックコード」です。これは、あるスケールに含まれる音だけを使って作られるコードの集まりです。
作り方はとてもシンプルです。
- 使うスケールを決める: 例えば、Cメジャースケールを使ってみましょう。
Cメジャースケール: C - D - E - F - G - A - B - C
- スケール上の各音を「根音(ルート)」にする: スケールの最初の音から順番に、コードの一番下の音(根音)とします。C、D、E、F、G、A、B、C...
- 根音からスケール内の音を重ねる: 各根音に対して、そのスケールの中にある音だけを使って、3度(または4度)ずつ音を積み重ねていきます。最も一般的なのは、3度で3つ(3和音)または4つ(7thコード)積み重ねる方法です。
Cメジャースケールを例に、各音を根音として3度ずつ積み重ねてみましょう。
- Cを根音: Cから3度上の音はE(スケール内の音)、Eから3度上の音はG(スケール内の音)。重ねると
C-E-G
。これは C major コードです。 - Dを根音: Dから3度上の音はF、Fから3度上の音はA。重ねると
D-F-A
。これは Dm (D minor) コードです。 - Eを根音: Eから3度上の音はG、Gから3度上の音はB。重ねると
E-G-B
。これは Em (E minor) コードです。 - Fを根音: Fから3度上の音はA、Aから3度上の音はC。重ねると
F-A-C
。これは F major コードです。 - Gを根音: Gから3度上の音はB、Bから3度上の音はD。重ねると
G-B-D
。これは G major コードです。 - Aを根音: Aから3度上の音はC、Cから3度上の音はE。重ねると
A-C-E
。これは Am (A minor) コードです。 - Bを根音: Bから3度上の音はD、Dから3度上の音はF。重ねると
B-D-F
。これは Bm(b5) (B diminished) コードです。
このようにして、Cメジャースケールからは以下の7つの3和音(トライアド)が生まれます。 C, Dm, Em, F, G, Am, Bm(b5)
これらのコードは、すべてCメジャースケールに含まれる音だけで構成されています。これがCメジャースケールのダイアトニックコードです。
同様に、7thコード(根音から3度ずつ4つ積み重ねたコード)も作ることができます。 * C-E-G-B: Cmaj7 * D-F-A-C: Dm7 * E-G-B-D: Em7 * F-A-C-E: Fmaj7 * G-B-D-F: G7 * A-C-E-G: Am7 * B-D-F-A: Bm7(b5)
Cメジャースケールからは以下の7つの7thコードが生まれます。 Cmaj7, Dm7, Em7, Fmaj7, G7, Am7, Bm7(b5)
他のスケール(例:イ短調のスケール、ドリアンスケールなど)でも、同じようにそのスケールの音だけを使って3度(または4度)ずつ積み重ねれば、そのスケールから生まれるダイアトニックコードを知ることができます。
スケールからコードを知ることの実践的な応用
この「スケールからコードが生まれる」という知識は、あなたの音楽活動にすぐに役立ちます。
作曲への応用
- 曲の雰囲気を決める: まず、曲で表現したい雰囲気(明るい、暗い、浮遊感がある、民族的など)に合ったスケールを選びます。
- 使えるコードをリストアップ: 選んだスケールから生まれるダイアトニックコードをリストアップします。
- コード進行を作る: リストアップしたコードを組み合わせてコード進行を作ります。これにより、選んだスケールの雰囲気に合った自然な響きのコード進行を作りやすくなります。例えば、Cメジャースケールから生まれたコード(C, Dm, Em, F, G, Am, Bm(b5))を使えば、明るく安定した雰囲気のコード進行が作りやすいでしょう。
- メロディーを乗せる: 作ったコード進行に合わせてメロディーを考えます。ダイアトニックコードは、そのスケールに含まれる音でできているため、スケール内の音をメロディーに使うと、コードとよく馴染む響きになります。
演奏・アドリブへの応用
- コード進行を理解する: 演奏する曲のコード進行を見たときに、「このコードはどのスケールから来ている可能性が高いか?」と考える癖をつけましょう。例えば、Cメジャーキーの曲でAmコードが出てきたら、「これはCメジャースケールから生まれたダイアトニックコードだな」と分かります。
- ソロやフレーズ作りのヒントに: あるコード(例:Am)が、特定のスケール(例:Cメジャースケール)から生まれたダイアトニックコードだと分かれば、そのコードの上でCメジャースケールに含まれる音を使ってフレーズを弾くことができます。これは、スケール練習が直接アドリブにつながる理由の一つです。コードが変わるたびに適切なスケールや音を選ぶ助けになります。
- バッキングやアルペジオ: コードの構成音を知っているだけでなく、そのコードがどのスケールの一部であるかを理解することで、バッキングの際のオブリガード(合いの手)や、アルペジオで使う音を選ぶ際の指針になります。
耳コピ・楽曲分析への応用
- コードの響きを理解する: 曲を聴いてコードを耳コピする際に、そのコードが持つ響きが、どのスケールから生まれるコードの響きに近いかを考えることができます。
- キー(調)を推測する: 曲全体で使われているコードを見て、それらがどのスケールのダイアトニックコードとして説明できるかを考えることで、その曲のキー(調)を推測しやすくなります。
まとめ
スケールは音楽の「音の材料リスト」であり、コードはその材料を使って作られた「音の積み重ね」です。スケールからダイアトニックコードがどのように生まれるかを理解することは、コードの仕組みを知る上で非常に重要です。
この記事で紹介したように、Cメジャースケールからは C, Dm, Em, F, G, Am, Bm(b5) といったコードが生まれます。この関係性を理解し、様々なスケールでダイアトニックコードを作ってみる練習は、作曲、演奏、耳コピなど、あらゆる音楽の実践に役立ちます。
ぜひ、他のスケール(例:Gメジャースケール、Aマイナースケールなど)でも、そこから生まれるダイアトニックコードを自分で導き出してみてください。スケールとコードの関係性を深く理解すればするほど、あなたの音楽の世界は広がっていくでしょう。