メロディーが生き生きする!コードトーンとノンコードトーンのやさしい使い方
音楽理論を学び始めた皆さん、こんにちは。「音楽理論実践ノート」へようこそ。
作曲や演奏をしていると、「メロディーがなんだか単調に聞こえるな」「もっと表情豊かなメロディーを作りたいな」と感じることがあるかもしれません。メロディーは音の連なりですが、その背景には必ずコードの響きがあります。
実は、メロディーを構成する音が、その時に鳴っているコードとどのような関係にあるかを知ることで、メロディーの響きや印象は大きく変わります。
この記事では、メロディーを「コードトーン」と「ノンコードトーン」という2つの視点から捉え、どのように使い分ければメロディーに動きや感情を加えることができるのか、実践的な使い方をやさしく解説します。
コードトーンとは? メロディーの「骨格」となる音
まず、「コードトーン」について解説します。コードトーンとは、その時に鳴っているコードに含まれる音のことです。例えば、Cメジャーというコードは「ド」「ミ」「ソ」という3つの音でできています。この「ド」「ミ」「ソ」がCメジャーコードのコードトーンです。
コードトーンをメロディーに使うことには、次のような特徴があります。
- 安定した響き: コードの構成音なので、コードと非常によく馴染み、安定した、落ち着いた響きになります。
- コード感を強調: コードトーンを中心にメロディーを作ることで、そのコードの響きがはっきりと伝わります。
例えば、Cメジャーコードが鳴っている時に、「ド」「ミ」「ソ」を中心にメロディーを作ると、とても安定して聞こえます。
例:Cコードの上で「ド→ミ→ソ→ミ→ド」というメロディー
DAWで曲を作っている場合、コードを打ち込んだトラックの上にメロディーのトラックを重ねる際に、そのコードに含まれる音を意識してメロディーラインを描いてみてください。ピアノロール上で、コードの構成音と同じ高さの鍵盤を打つようなイメージです。これだけで、メロディーがコードから浮くことなく、しっかりと馴染んで聞こえるようになります。
ノンコードトーン(非和声音)とは? メロディーに「動き」と「表情」を与える音
次に「ノンコードトーン」について解説します。ノンコードトーンとは、その時に鳴っているコードには含まれない音のことです。音楽理論では「非和声音」とも呼ばれます。
ノンコードトーンはコードの構成音ではないため、コードに対して少し不安定な響きを持っています。しかし、この「不安定さ」が音楽に動きや緊張感、そして解決する時の心地よさをもたらし、メロディーに豊かな表情を与えてくれます。
ノンコードトーンにはいくつかの種類がありますが、ここでは代表的なものをいくつかご紹介し、その使い方を見てみましょう。
1. 経過音(けいかおん)
あるコードトーンから別のコードトーンへ段階的に移動する途中で使われるノンコードトーンです。不安定な音ですが、次のコードトーンへスムーズに「経過」することで、滑らかなメロディーの流れを作ります。
例:Cコード(ドミソ)が鳴っている時に、「ド」から「ミ」へ移動するメロディーを考えます。 「ド→ミ」も良いですが、「ド→レ→ミ」のように、コードに含まれない「レ」を経由してみましょう。 「レ」が経過音です。「ド」から「レ」へ、そして「レ」から「ミ」へと順に移動することで、メロディーに自然な流れと少しの緊張感が生まれます。
2. 刺繍音(ししゅうおん)
あるコードトーンから一時的に隣の音に移り、すぐに元のコードトーンに戻るノンコードトーンです。メロディーを装飾するような働きをします。
例:Cコード(ドミソ)が鳴っている時に、「ミ」の音を伸ばしたいとします。 ただ「ミ」と伸ばすのではなく、「ミ→ファ→ミ」のように、コードに含まれない「ファ」を挟んでみましょう。 「ファ」が刺繍音です。「ミ」という安定した音から少し離れ、「ファ」という不安定な響きを挟んで再び「ミ」に戻ることで、メロディーに揺らぎや表情が生まれます。
3. その他のノンコードトーン
他にも、次のコードトーンを先取りする「先取音」、前のコードトーンから跳躍して不安定な音に進み解決する「倚音」など様々な種類がありますが、最初は経過音や刺繍音のように、隣の音や次のコードトーンへの解決を意識して使ってみるのがおすすめです。
DAWで実践する際は、コードを打ち込んだ上でメロディーを打ち込む際、コードトーンではない音(ノンコードトーン)を使ってみてください。そして、そのノンコードトーンの後に、必ず次のコードトーンやコードと合う音程(安定する音)を配置することを意識しましょう。これがノンコードトーンを「解決させる」ということです。この「不安定→安定」という動きが、リスナーの耳に心地よい流れとして聞こえます。
コードトーンとノンコードトーンの使い分け
メロディーを作る際には、コードトーンとノンコードトーンを適切に使い分けることが重要です。
- コードトーン: メロディーの骨格や、フレーズの終着点に使うと、安定感や区切りが明確になります。メロディーの大部分をコードトーンで構成することで、しっかりとした響きになります。
- ノンコードトーン: メロディーの途中経過や装飾として使うと、動きや表情、奥行きが生まれます。使いすぎるとメロディーが不安定になりすぎることもあるため、コードトーンへの「解決」を意識しながら効果的に配置するのがポイントです。
イメージとしては、家を建てる時の「柱」がコードトーン、壁の模様や飾り付けがノンコードトーンのようなものです。柱(コードトーン)がしっかりしているからこそ、装飾(ノンコードトーン)が映える、というように考えると分かりやすいかもしれません。
例えば、定番のコード進行 C→G→Am→Em という進行で考えてみましょう。
- Cコードの上では、Cメジャーのコードトーン(ドミソ)を主に使いつつ、必要に応じて経過音や刺繍音(例: ド→レ→ミ、ミ→ファ→ミ)を挟む。
- Gコードの上では、Gメジャーのコードトーン(ソシレ)を中心に使う。
- Amコードの上では、Aマイナーのコードトーン(ラドミ)を中心に使う。
- Emコードの上では、Eマイナーのコードトーン(ミソシ)を中心に使う。
このように、それぞれのコードで使えるコードトーンを意識しながら、ノンコードトーンを次のコードトーンへ解決させるようにメロディーを組み立ててみてください。
まとめ
この記事では、メロディー作りにおいて非常に重要な「コードトーン」と「ノンコードトーン(非和声音)」について解説しました。
- コードトーン:そのコードに含まれる音。安定した響きでメロディーの骨格になります。
- ノンコードトーン:そのコードに含まれない音。適切な使い方(特にコードトーンへの解決)でメロディーに動きや表情を与えます。
最初は難しく感じるかもしれませんが、まずは簡単なコード進行を決めて、その上でコードトーンだけを使ったメロディーと、経過音や刺繍音などのノンコードトーンを少しだけ加えてみたメロディーを作り比べてみてください。きっと、ノンコードトーンを加えることでメロディーが生き生きとし、表情豊かになることを実感できるはずです。
音楽制作では、これらの音の使い分けが無意識のうちに行われていることも多いですが、理論として知っていることで、より意図的に、効果的にメロディーをデザインできるようになります。
ぜひ、ご自身の作曲や演奏に、コードトーンとノンコードトーンの意識を取り入れてみてください。きっと新しい発見があるはずです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。