音楽理論実践ノート

コード進行にのせる!ペンタトニックスケールの実践ガイド

Tags: ペンタトニックスケール, 音楽理論, 作曲, アドリブ, コード進行

音楽理論実践ノートをご覧いただき、ありがとうございます。

作曲や演奏に活かせる実践的な音楽理論を解説する本記事では、初心者の方にもすぐに試していただける「ペンタトニックスケール」に焦点を当てて解説します。

ペンタトニックスケールは、文字通り「5つの音」で構成されるスケールです。音の数が少ないため覚えやすく、音楽理論の学習を始めたばかりの方でも手軽に使い始めることができます。そして何より、このシンプルさが多くのジャンルで美しいメロディーや印象的なフレーズを生み出す源となっています。

この記事では、ペンタトニックスケールの基本から、特に「コード進行に合わせてどのように使うのか」という実践的な側面に重点を置いて解説します。この記事を読み終える頃には、きっとペンタトニックスケールを使って、ご自身の音楽に新しい彩りを加えるヒントを得られるはずです。

ペンタトニックスケールとは? 5つの音の秘密

ペンタトニックスケールにはいくつかの種類がありますが、最も一般的で使いやすいのは「メジャーペンタトニックスケール」と「マイナーペンタトニックスケール」です。

通常のメジャースケールやマイナースケールは7つの音でできていますが、ペンタトニックスケールはそこから特定の2つの音を抜いて5つの音にします。この抜かれた音が、スケール全体の響きをシンプルにし、「外れた音」に聞こえにくい特徴を持たせているのです。

例えば、Cメジャーペンタトニックスケールは、Cメジャースケール(ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド)から4番目の音(ファ)と7番目の音(シ)を抜いた音で構成されます。

これを度数で表すと、ルート(1度)から見て 1度, 2度, 3度, 5度, 6度 の音になります。

一方、Aマイナーペンタトニックスケールは、Aマイナースケール(ラ シ ド レ ミ ファ ソ ラ)から2番目の音(シ)と6番目の音(ファ)を抜いた音で構成されます。

これを度数で表すと、ルートから見て 1度, 短3度, 4度, 5度, 短7度 の音になります。

お気づきでしょうか? CメジャーペンタトニックスケールとAマイナーペンタトニックスケールは、構成している「音」は同じです(C, D, E, G, A)。ルート(基準となる音)が異なるだけです。このように、長調(メジャー)と短調(マイナー)で同じ構成音を持つペンタトニックスケールが存在します。これを平行調の関係と呼びます。Cメジャーの平行調はAマイナーですね。

コード進行に合わせてペンタトニックスケールを使う

さて、ここからが実践的な部分です。ペンタトニックスケールをコード進行に合わせて使う基本的な考え方はいくつかありますが、まずは最もシンプルで強力な方法をご紹介します。

基本的な考え方1:コードのルートと同じメジャーペンタ(またはマイナーペンタ)を使う

これは、非常に直感的で分かりやすい方法です。

例として、Cメジャーのコードが鳴っているときに、Cメジャーペンタトニックスケールを使う、という方法です。構成音は C, D, E, G, A ですね。これらの音を使ってメロディーを作ったり、楽器で弾いたりします。

シンプルなコード進行で試してみましょう。

| コード進行例 1: C - G - Am - F | | :---------------------------- | | Cコード: Cメジャーペンタ (C, D, E, G, A) を使う | | Gコード: Gメジャーペンタ (G, A, B, D, E) を使う | | Amコード: Aマイナーペンタ (A, C, D, E, G) を使う | | Fコード: Fメジャーペンタ (F, G, A, C, D) を使う |

それぞれのコードに対して、そのコードのルート音を基準にしたメジャーペンタ(またはマイナーペンタ)を使うことで、比較的安定したメロディーやフレーズを作ることができます。DAWでこのコード進行を鳴らしながら、それぞれのコードの箇所で対応するペンタトニックスケールの音を鍵盤で弾いてみたり、打ち込んでみたりしてください。

基本的な考え方2:キー(調)のペンタトニックスケールを全体で使う

ポップスやロックなど、多くの楽曲は特定のキー(調)で書かれています。例えば、曲全体がCメジャーキーである場合、鳴っているコードがC, G, Am, F...と変わっていっても、Cメジャーペンタトニックスケールを曲の全体を通して使うというアプローチです。

例として、先ほどと同じコード進行 C - G - Am - F が、Cメジャーキーの曲の一部として使われているとします。この場合、鳴っているコードがCでも、Gでも、Amでも、Fでも、Cメジャーペンタトニックスケール(C, D, E, G, A)の音だけを使ってメロディーやアドリブを演奏します。

Cメジャーペンタトニックスケールの構成音(C, D, E, G, A)を思い出してください。 * Cコード (C E G) には C, E, G が含まれます。 * Gコード (G B D) には G, D が含まれます。 * Amコード (A C E) には A, C, E が含まれます。 * Fコード (F A C) には A, C が含まれます。

このように、Cメジャーペンタトニックスケールの音は、Cメジャーキーによく使われるこれらのコードの「コードトーン」(コードを構成する音)を多く含んでいます。そのため、どのコードが鳴っていても、Cメジャーペンタトニックスケールの音を使えば、コードと大きくぶつかることなく、自然な響きのメロディーやフレーズを作ることができるのです。

この「キーのペンタトニックスケールを全体で使う」という方法は、特に初心者の方にとって非常に強力で、手軽にアドリブ演奏を始めるきっかけになります。DAWに簡単なコード進行を打ち込み、キーのメジャーペンタトニックスケールの音だけを使って適当に打ち込んでみてください。それだけでも、意外と様になるメロディーやフレーズが生まれることに驚くはずです。

実践!ペンタトニックスケールでメロディーを作る・アドリブを弾く

それでは、具体的な実践方法をいくつかご紹介します。

  1. シンプルなコード進行を用意する: まずは、C - G - Am - F のような、基本的なコード進行をDAWでループ再生するか、楽器で弾けるようにします。キーはCメジャーですね。
  2. キーのメジャーペンタを確認する: この場合、Cメジャーペンタトニックスケール(C, D, E, G, A)です。
  3. ペンタトニックスケールの音だけを使って弾いてみる/打ち込んでみる: コード進行に合わせて、確認したCメジャーペンタトニックスケールの音だけを使って、自由に音を並べてみてください。
    • 最初はリズムを気にせず、音程だけを試してみましょう。「C, E, G, A, G, E, D...」のように、スケール内の音を適当に上下に動かしてみます。
    • 次に、リズムをつけてみましょう。短い音符や長い音符を混ぜてみます。
    • コードが変わるタイミングで、コードトーンに近い音を弾く(あるいは打ち込む)ように意識すると、よりコードに馴染んだ響きになります。例えば、Cコードの時はC, E, Gの音を、Gコードの時はG, Dの音を、Amコードの時はA, C, Eの音を強調する、といったイメージです。
  4. マイナーペンタも試す: 同じコード進行でも、Aマイナーペンタトニックスケール(A, C, D, E, G)を使ってみると、少しブルースフィーリングのある、あるいは切ない響きになります。特にAmコードやFコードとの相性が良いですが、CやGの上でも意外と面白い効果が得られます。キーがCメジャーでも、平行調であるAマイナーのペンタトニックスケールを使うことはよくあります。これも実際に音を出して試してみるのが一番です。

ペンタトニックスケールは、音数が少ないからこそ、それぞれの音が際立ち、印象に残りやすいメロディーを作りやすいという利点があります。有名なリフやメロディーにも、ペンタトニックスケールが多用されている例は数多くあります。

まとめ:ペンタトニックスケールで音楽を「楽しむ」第一歩を

ペンタトニックスケールは、音楽理論の扉を開く最初のステップとして最適です。シンプルな構成でありながら、メロディー作成、アドリブ演奏、フレーズ作りなど、実践的な応用の幅は非常に広いです。

まずは、ご自身の好きな曲のコード進行を調べてみたり、簡単なコード進行を耳コピしたりして、そのキーのペンタトニックスケールを使って自由に音を鳴らしてみてください。理屈だけでなく、実際に「音を出す」ことが何よりも大切です。

ペンタトニックスケールに慣れてきたら、抜かれている2つの音(アボイドノートと呼ばれることもあります)を加えて7音スケールに挑戦したり、他の種類のペンタトニックスケール(ドミナントペンタなど)を学んでみたりと、さらに音楽表現の幅を広げることができます。

この記事が、皆様の音楽制作や演奏における新たな発見や実践のヒントになれば幸いです。